輔仁大学は、「カトリック大学」(天主教大學)という名もあるように、台湾で唯一のカトリック教系の大学です。
輔仁大学付属の中国語学校(輔仁大學華語文中心)は、輔仁大学のキャンパス内にあり、国際色豊かな大学の雰囲気の中で中国語を学ぶことができます。
今回の訪問では、中国語教師として17年のキャリアを持つ、潘 惟佳さんが、輔仁大学の中国語センターについて語ってくださいました。潘 惟佳 老師は、ひとりの中国語教師であると同時に、輔仁大学 華語文センターの事務や運営まで担っていて、外国人留学生について精通しています。
輔仁大学 華語文華語センターの潘 惟佳 老師。
Q. 輔仁大学 中国語センターの特色、他校との違いを教えてください
まず、1クラス7人以下の少人数制を採用しているところですね。
この中国語センターは、ISO 29990(教育事業に関する国際規格)や ISO 9000 の認証を取得しています。それに台湾教育部の認証も取っています。
常に学生の声を聞いて、サービスの改善に努めています。
教室は TOCFL(台湾教育部の認定する中国語検定)の試験会場にもなっているんです。
そうそう、輔仁大学はカトリック系の学校ですから、学生の悩みごととか、精神的な支援をするのにも長けていますよ!
Q. 教師の質を高めるために、どんな取り組みをしていますか?
まず校内で3ヶ月おきに、教員を評価する水準試験があって、どれか1つの項目の点数が足りなくても不合格です。
教員の質という点では、うちの学校はかなり評判はいいと思いますよ。
年に1回は、教育の専門家を呼んで、校内で教員向けセミナーを開いています。
校外では、例えば師範大学で開催されている、中国語教育のワークショップに参加したり。ワークショップに参加した教師が帰ってきたら、学んできたことをまた他の教師に教え合って、情報を共有します。
Q. クラスの担当教師はどのように決めていますか?
1つのクラスに、1、2名の教員が就いて、教科や教材に応じて分担します。
通常だと1週に15時間の授業がありますが(※ 月〜金 各3時間)、そのうち12時間は一般的な中国語課程、つまり「聴く・話す・読む・書く」の4つを学びます。
それ以外の3時間は選択科目で、レベルによって科目は違ってきます。一例ですが、TOCFL 対策クラス、文法クラス、古事成語クラス、歌唱クラスなどがあります。
中国語課程を担当する教師と、選択科目の教師とに分かれています。
Q. 中国語センターにはどんな設備がありますか?
中国語センターの中というより、ここは輔仁大のキャンパスですから、大学の設備はどれでも使えますよ。図書館とか、プールやジム、PCルームとか、輔仁大の学生に開放されてる設備は、中国語センターの受講生もまったく同じように使えます。
Q. 学校で何かイベントや、授業で出かけたりすることはありますか?
年間の三大伝統行事(新年、端午節、中秋節)のときには、校内でその季節の催しをします。
たとえば、新年には「春聯」を書いたり、端午節には「粽子(ちまき)」作り、中秋節なら「月餅」作りとか。
伝統行事の授業は、毎年開催してますが、ツアーみたいのになると、希望者が一定人数そろわないとできないので不定期です。
ただ、三大行事は春、秋なので、夏の学期に来てしまうと何もないかもしれないですね。
(※ 伝統行事は旧暦で行われるので、新暦とは毎年ズレがあります)
Q. この中国語センターは、輔仁大学キャンパスの中にありますが、台湾人の学生と知り合ったり、交流する機会はありますか?
学生のサークルや同好会の活動に参加するのをオススメしています。語学留学生でも、大学のサークルには入れるんです。
夏休みや冬休みだと活動してませんけど。もし新学期(9月)のころなら、いろんなサークルが新入生勧誘を大々的にやってます。
活動内容とかは、それぞれのサークルの Facebook ページがあるので、そちらを見てもらえばいいと思います。
Q. 日本人留学生の割合はどれくらい?
学期によって違いますが、今学期だと二十数名といったところです。受講生はぜんぶで200名ちょっとですから、1割くらいが日本人学生になります。でも、ほんとに学期によって変動しますよ。もっと多いときも、少ないときもあります。
日本以外に多いのは韓国、それから、ベトナム、インドネシア… だいたい東アジアからの留学生ですね。
Q. 日本人留学生の特長はなんだと思いますか?
漢字を書くのは得意ですが、やはり発音が難点ですよね。
恥ずかしがってしゃべらない人も多いですが、逆にめちゃくちゃ快活な人もいて、日本人留学生は両極端な印象です。ただ、どっちのタイプでも、ちゃんと課題の提出期日を守ったり、規則を遵守するのが日本人の特長でしょう。
その反面、教師の言うことを、ただただ従順に聞いてしまう傾向もあります。
欧米の学生だったら、納得できなかったり疑念があれば、すぐに質問してきます。
ある日本人女性の留学生なんですが、気遣いがよくて、授業中にクラスメイトの面倒を見てくれたり、ちょっとした保母さんみたいになっています(笑) おかげでそのクラスは雰囲気も良くて。
日本人女性はほんと優しいと思います。髪型も服装も毎日きれいにしているし(笑)
Q. 日本人留学生が台湾に来てとまどうことはありますか?
生活の上でそこまで深刻な問題は聞いたことがないですね。台湾は日本と近いし、環境や習慣もそこまで大きな違いはないですから。
Q. 日本人に限らず、外国人が台湾で直面する問題ってなんでしょう?
台湾に来たばかりの外国人は、「台湾人は冷淡だ」という印象を持つかもしれません。
たとえば、バスに乗ってても、外国人の隣の席には誰も座ろうとしないとか。日本人なら容貌がそれほど違うわけではないので、それほどでもないかもしれませんが、ヨーロッパや東南アジアから来た人だとそういうこともあります。
「外国人蔑視だ!」と思う人もいますが、けっしてそうではありません。私たち台湾人にしてみても外国人はちょっと怖いのです。「英語が話せないので意思疎通できるかな」とか、そういうのが不安で萎縮しているだけなんです。
だからもし台湾人に話しかけて、そっけない態度をとられても、意地悪や冷たくしているわけじゃないと分かってもらえればと思います。
Q. 日本人留学生のことで、なにか印象に残っているエピソードはありますか?
以前、日本人の年輩の留学生がいました。彼は定年退職するまで、ずっと1つの会社に勤め上げた、終身雇用時代の日本人サラリーマンですね。 彼はリタイアしてから、ようやく台湾に留学に来ました。彼はこう言ったんです。「この留学は、定年までずっと休まず働いた自分へのプレゼントだ」って。
Q. 台湾留学の前にやっておいたほうがいい中国語の学習はありますか。たとえば発音の練習とか。
いえ、実は我々教師からすると、まったく中国語がわからないほうが却って教えやすかったりする場合があるんです。
先にへんにクセが付いてしまっていると直しにくいですから。
Q. 日本の中国語教室だと、中国人の先生が多いですから、台湾とちょっと発音が違ったりしますしね
それは支障ないんですよ。中国人だろうと台湾人だろうと、きちんとした中国語教師の資格や経験を持っていれば、どこの出身であっても、標準的な中国語にさほど違いはありません。
むしろ台湾の友人とか、中国語指導法を学んでいない素人から教わるほうが、正しくない中国語をおぼえてしまう恐れがあります。
それなら何もせず、まっさらな状態で留学に来てもらったほうがいいと思います。
たまに留学生から「台湾人の友だちから聞いたのと、先生が教えてる使い方が違う!」と言われることがあります。その台湾の友人の言い方は間違いではないにしても、台湾特有のスラングかもしれない。
教師が教えているのは《規範的な中国語》なんです。規範的な中国語なら、中国や台湾に限らず、シンガポールやマレーシアに行っても通用しますよ。
■ 潘 老師、お忙しい中、ありがとうございました!
輔仁大学 中国語センター(華語文中心)は、大学キャンパス内にあります。台北駅からは約1時間。学校のすぐ前を地下鉄が通っていて、「輔大」駅という、そのまま学校の名前がつけられた駅があります。
通常の学期は、春・夏・秋・冬の年4学期。
7月、8月には3週間ほどの、夏の短縮コースも開講しています。